WIPO著作権条約(仮訳)


目 次
前文
第1条 ベルヌ条約との関係
第2条 著作権の保護の範囲
第3条 ベルヌ条約第2条から第6条までの適用
第4条 コンピュータ・プログラム
第5条 データの編集物(データベース)
第6条 頒布権
第7条 商業的貸与権
第8条 公衆への伝達権
第9条 写真の著作物の保護期間
第10条 制限及び例外
第11条 技術的手段に関する義務
第12条 権利管理情報に関する義務
第13条 適用の時期的範囲
第14条 権利の執行に関する規定
第15条 総会
第16条 国際事務局
第17条 条約の構成員となる資格
第18条 条約に基づく権利及び義務
第19条 条約の署名
第20条 条約の効力発生
第21条 この条約の構成員となる効力が生ずる期日
第22条 条約の留保の非承認
第23条 条約の廃棄通告
第24条 条約の言語
第25条 寄託者

前 文
締約国は、
 文学的及び美術的著作物に関する著作者の権利の保護を、できる限り効果的かつ統一的な方法で発展させ、及び保持することを希望し、 新たな経済的、社会的、文化的及び技術的発展によって生じた課題について適切な解決策をもたらすために、新たな国際的規則を導入するとともに、既存の規則の一部についてその解釈を明確化する必要性を認め、 情報・コミュニケーション技術の発展及び集中化が文学的及び美術的著作物の創造及び利用に対して及ぼす重大な影響を認め、文学的及び美術的創作活動のためのインセンティブとしての著作権保護の顕著な重要性を強調し、ベルヌ条約において既に規定されている、著作者の権利と、特に教育、研究、情報へのアクセスといったより大きな公共の利益との間のバランスを、維持する必要性を認めて、つぎのとおり協定した。

第1条
ベルヌ条約との関係
(1)この条約は、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約によって形成された同盟の同盟国である締約国に関する、同条約第20条に規定する特別の取極である。この条約は、ベルヌ条約以外のいかなる条約とも何ら関係を有するものではなく、また、他の条約に基づくいかなる権利及び義務を害するものでもない。
(2)この条約のいかなる規定も、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に基づいて締約国が相互に負っている既存の義務を免じるものではない。
(3)以下、「ベルヌ条約」とは、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約の1971年7月24日のパリ条約をいう。
(4)締約国は、ベルヌ条約の第1条から第21条まで及び同条約の附属書の規定を遵守しなければならない。

第2条
著作権の保護の範囲
 著作権の保護は、表現されたものに及び、思想、手続、運用方法又は数学的概念自体に及ばない。

第3条
ベルヌ条約第2条から第6条までの適用
 締約国は、この条約に規定する保護に関し、ベルヌ条約第2条から第6条までの規定を準用しなければならない。

第4条
コンピュータ・プログラム
 コンピュータ・プログラムは、ベルヌ条約第2条に規定する文学的著作物として保護される。その保護は、その表現の方法又は形式のいかんを問わず、コンピュータ・プログラムに適用される。

第5条
データの編集物(データベース)
 素材の選択又は配列によって知的創作物を形成する、データ又はその他の資料の編集物は、その形式を問わず、知的創作物として保護される。その保護は、当該データ又は資料自体には及ばず、また、当該編集物に含まれるデータ又は資料について存在する著作権を害するものではない。

第6条
頒布権
(1)文学的及び美術的著作物の著作者は、販売又はその他の所有権の移転により、その著作物の原作品又は複製物を公衆に利用可能にすることを許諾する排他的権利を享有する。
(2)この条約のいかなる規定も、著作物の原作品又はその複製物について、著作者の許諾を得て最初に販売又はその他の所有権の移転が行われた後に(1)の権利が消尽する条件を締約国が定める自由に、影響を与える物ではない。

第7条
商業的貸与権
(1)(i) コンピュータ・プログラム、(ii) 映画の著作物及び、(iii)締約国の国内法が定めるレコードに固定された著作物 の著作者は、その著作物の原作品又は複製物について、公衆への商業的貸与を許諾する排他的権利を享有する。
(2)(1)の規定は、次のものには適用しない。
 (i)コンピュータ・プログラム(当該プログラム自体が貸与の本質的な対象でない場合)
 (ii)映画の著作物(商業的貸与が当該著作物について排他的複製権を著しく侵害するような広範な複製をもたらさない場合)
(3)(1)の規定にかかわらず、締約国は、1994年4月15日においてレコードに固定された著作物の複製物の商業的貸与に関し著作者に対する衡平な報酬の制度を有しており、かつ引き続き有効に持ち続けている場合には、レコードに固定された著作物の商業的貸与が著作者の排他的複製権の著しい侵害を生じさせていないことを条件として、当該制度を維持することができる。

第8条
公衆への伝達権
 ベルヌ条約第11条(1)(ii)、第11条の2(1)(i)及び(ii)、第11条の3(1)(ii)、第14条(1)(ii)及び第14条の2(1)の規定を害することなく、文学的及び美術的著作物の著作者は、有線又は無線の方法による著作物のあらゆる公衆への伝達を許諾する排他的権利を享有する。ここでいう公衆への伝達には、公衆の構成員が個別に選択した場所及び時において著作物にアクセスできるように、当該著作物を公衆に利用可能な状態にすることを含むものとする。

第9条
写真の著作物の保護期間
 写真の著作物に関し、締約国は、ベルヌ条約第7条(4)の規定を適用しないものとする。

第10条
制限及び例外
(1)締約国は、著作物の通常の利用を妨げず、かつ、権利者の正当な利益を不当に害しない特別な場合には、国内法により、この条約に基づき文学的及び美術的著作物の著作者に与えられた権利の制限又は例外を定めることができる。
(2)ベルヌ条約の適用に際し、締約国は、いかなる権利の制限又は例外も、著作物の通常の利用を妨げず、かつ、権利者の正当な利益を不当に害しない特別な場合に限定しなければならない。

第11条
技術的手段に関する義務
 締約国は、著作者により許諾されておらず法によっても許容されていない行為をその著作物について制限する、効果的な技術的手段であって、この条約又はベルヌ条約に基づく権利の行使に関して著作者が利用するものの回避に対して、適切な法的保護及び効果的な法的救済を定めなければならない。

第12条
権利管理情報に関する義務
(1)締約国は、この条約又はベルヌ条約が対象とする権利の侵害を誘発し、可能にし、助長し、又は隠蔽する結果をもたらすことを知りながら(民事救済の場合には、そのことを知る合理的根拠を有しながら)、次の行為を故意に行う者に対して、適切かつ効果的な法的救済を定めなければならない。
 (i)正当な権限なく電子的権利管理情報を除去又は改変すること
 (ii)正当な権限なく電子的権利管理情報が除去又は改変されたことを知りながら、著作物又は著作物の複製物を、正当な権限なく、頒布し、頒布のために輸入し、放送し、又は、公衆に伝達すること
(2)本条において「権利管理情報」とは、著作物、著作物の著作者、著作物に係るすべての権利者、又は著作物の利用の期間及び条件に関する情報を特定する情報、並びにそのような情報を表示するあらゆる数値又はコードであって、何らかの情報項目について、著作物の複製物に付され、又は公衆への著作物の伝達に伴って示されるものをいう。

第13条
適用の時期的範囲
 締約国は、この条約に規定するすべての保護について、ベルヌ条約第18条の規定を適用するものとする。

第14条
権利の執行に関する規定
(1)締約国は、自国の法制度に従い、この条約の適用を確保するために必要な措置をとることを約束する。
(2)締約国は、この条約が対象とする権利の侵害行為に対し効果的な措置(侵害を防止するための迅速な救済措置及び追加の侵害を抑止するための救済措置を含む。)がとられることを可能にするため、当該行使手続を国内法において確保する。

第15条
総会
(1)(a)締約国は、総会を有する。
   (b)各締約国は、1人の代表によって代表されるものとし、代表は、代表代理、顧問及び専門官の補佐を受けることができる。
   (c)各代表団の費用は、その代表団を任命した締約国が負担する。総会は世界知的所有権機関(以下「WIPO」という。)に対し、国際連合総会の確立された慣行において発展途上国として扱われている締約国及び市場経済に移行中の国である締約国の代表の参加を支援するために財政的援助を与えることを要請することができる。
(2)(a)総会は、この条約の維持及び発展並びにこの条約の適用及び運用に関する問題を取り扱う。
   (b)総会は、特定の政府間機関をこの条約の構成員とするための承認に関する、第17条(2)により割り当てられた機能を形成する。
   (c)総会は、この条約の改正のための外交会議の招集を決定するとともに、そのような外交会議の準備のためにWIPO事務局長に対して必要な指示を与える。
(3)(a)国家であるところの各締約国は、一の票を有し、その国の名においてのみ投票する。
   (b)政府間機関であるところの締約国は、この条約の構成員である構成国の数と同一の票数により、構成国の代わりに、投票に参加することができる。そのような政府間機関は、構成国のいずれかの国が投票権を行使し、あるいは棄権する場合には、投票に参加することができない。
(4)総会は、WIPO事務局長の招集により、2年ごとに1回、通常会議として会合する。
(5)総会は、臨時会期の招集や定足数の要件、この条約の規定を条件とした様々な種類の決議のための多数決の要件を含む、独自の手続規則を定める。

第16条
国際事務局
 WIPO国際事務局が、この条約に関する管理業務を行う。

第17条
条約の構成員となる資格
(1)WIPOの構成国は、この条約の構成員となることができる。
(2)総会は、この条約で定められる事項について機能を有し、かつすべての構成国を拘束する法制を有することを宣言し、また、その内部手続に従ってこの条約の加盟国になることを正当に承認されたことを宣言するいかなる政府間機関についても、この条約の構成員とする承認の決定をすることができる。
(3)欧州共同体は、この条約を採択した外交会議において前項の宣言をした場合には、この条約の構成員となることができる。

第18条
条約に基づく権利及び義務
 この条約に反する特定の取極を除き、各締約国はこの条約の下のすべての権利を享有し、すべての義務を負う。

第19条
条約の署名
 この条約は、1997年12月31日まで、WIPOの構成国及び欧州共同体による署名のために開放しておく。

第20条
条約の効力発生
 この条約は、30か国からの批准書又は加入書がWIPO事務局長に寄託された後3か月で効力を生ずる。

第21条
この条約の構成員となる効力が生ずる期日
この条約は、以下の期日より効力を生ずる。
(1)第20条による30か国については、この条約が効力を生じた日
(2)他の各国については、当該国がWIPO事務局長に文書を寄託した日から起算して3か月が満了した日
(3)欧州共同体については、第20条によりこの条約が効力を生じた後にその批准書又は加入書が寄託されたならば当該文書の寄託の後3か月が満了した日又はこの条約の効力が生じる前に当該文書が寄託されたならばこの条約の効力が生じた日の3か月後
(4)この条約の構成員となることを承認されたその他の政府間機関については、その加入書が寄託された後3か月が満了した日

第22条
条約の留保の非承認
 この条約に対するいかなる留保も、認められない。

第23条
条約の廃棄通告
 いずれの締約国も、WIPO事務局長にあてた通告によりこの条約を廃棄することができる。廃棄は、WIPO事務局長がその通告を受領した日から1年で効力を生ずる。

第24条
条約の言語
(1)この条約は、以下のすべての言語による訳文がひとしく正文である英語、アラビア語、中国語、フランス語、ロシア語及びスペイン語による本書1通について署名するものとする。
(2)前記(1)に掲げられた以外の言語による公定訳文は、すべての利害関係構成員との協議を経て、利害関係構成員の希望に基づき、WIPO事務局長によって作成される。この項の適用上、「利害関係構成員」とは、その公用言語の1つがかかわることとなるWIPOのいずれかの構成国、欧州共同体及びこの条約の構成員となるいずれかの政府間機関でその公用言語の1つがかかわることとなるものをいう。

第25条
寄託者
 この条約の寄託者は、WIPO事務局長とする。