第16回中韓日産業保健学術集談会 報告

2005年6月2日〜4日  中国大連市 Furama Hotel Dalian city



                                 吉川 徹 労働科学研究所


 2005年6月2日から4日にかけて、中国大連市にて第16回中韓日産業保健学術集談会が
開催された。本会は、中国、韓国、日本の3ヵ国の産業保健分野に関する実務者・研究者らが、
学術的・人的交流と相互親善を行い、産業保健衛生の向上に資することを目的に設立された会
議である。1982年の発足当初は日本と韓国の2ヵ国での交互開催であったが、2001年から
中国も参加し、3ヵ国持ち回り開催となっている。

 今回の中国での会議には、日本42名、韓国81名、中国148名、併せて271名の参加者が
あった。総演題数は149で、年々演題数は増えている。ますます活力が向上している会議である。
 初日の基調報告では、韓国のNam Won Paik氏(ソウル国立大学)は、韓国の労働衛生機関に
おける分析精度管理の歴史を述べた。続いて日本の庄司卓郎氏(産医大)は、建設業を中心とし
た安全対策について、具体的なTang-chun Wu氏(華中科技大学)からは、職業ストレスとHeat shock
proteins に関する報告が行われ、ストレス研究における中国の研究者の関心領域の広がりを見
ることができた。

 フリーコミュニケーションとして設定された各発表セッションは、各国から1〜2名が発表する構成で、
中国14演題、韓国9演題、日本11演題が取り上げられた。セッションテーマは「産業保健」、「神経
生理学研究ほか」、「バイオマーカー」、「ストレスと安全」、「粉じん」、「過重労働とVDT」であったが、
東アジア地域における労働衛生研究分野の現状と関心をみることができた。

 たとえば、「産業保健」のセッションでは、地元ニーズに根ざした効果的な産業保健活動のあり方
が模索された。小規模事業場(韓)や国立病院機構(日)での産業保健サービスの構築支援のため
の調査研究、疾病予防センターの役割研究(中)、企業活動のCSRレポートにみる産業保健の位置
付け(日)など、各国の産業保健活動の注目視点を反映していた。個別有害要因に関するセッション
では、東アジア各国、各地域で課題となっている労働衛生課題を取り上げた先端研究が報告され、
研究者・実務者の交流が広がる好機となった。

 ポスター発表によるコミュニケーションでは、中国67演題、韓国19演題、日本12演題が報告された。
このポスター会場は研究成果の発表の場であるとともに、旧知の研究者・実務者の邂逅の場ともなって
おり、互いの国で進めた共同研究の「その後」や、新しい共同作業の計画の意見交換などが進められ
ていた。

 これらのフリーコミュニケーションで行われた研究成果報告や意見交換は、東アジアで産業保健研究を
積極的に交流する意義を確かめるものとなった。特に、それぞれの演題では各国の事情を踏まえた産
業保健活動の一端がよく現れていて、お互いに学ぶ点が多かったことである。中国からは急速な経済発
展とともに注目されつつある古典的職業病や新規化学物質による中毒事例に取り組む研究、韓国からは
産業看護専門職による研究や小規模事業場への産業保健サービスの研究、日本からは若い研究者によ
る報告や、産業保健専門職による過重労働対策への視座、より予防に力点が置かれた産業保健活動に
関する研究などが報告され討議が進んだことは、東アジア全体の産業保健活動の活性化につながる芽を
見ることができた。