第15回日中韓産業保健学術集談会の報告

            
    〜東アジアにおける産業保健活動の交流をめざして〜

                         
                    
産業医科大学 産業生態科学研究所 
                         森本泰夫 長友寛子
 
                         東 敏昭(日本事務局長)

 第15回日中韓産業保健学術集談会が、平成16年5月20日から22日まで、北九州国際会議場にて開催された。本会は、大久保利晃学会委員長(産業医科大学学長)、東敏昭事務局長 (同大学産業生態科学研究所 所長)により、当大学の全面的支援のもとで運営された。

参加者は日本96名、韓国65名、中国78名、台湾1名、併せて240名(日本からの参加者として、中国3名、韓国2名、コートジボアール2名、フィジィ1名、オーストラリア1名の参加者を含む)で、総演題数は130題を超える過去最高のものとなった。

 昨年の第15回集談会は、沖縄宜野湾市で開催する予定であったが、SARSにより中止となり、本年北九州市で延期開催されることとなったものである。


              


開会式

大久保委員長より、昨年からの会議の延期、開催地移転の経緯説明を含めた挨拶が行われ、厚生労働省の安全衛生部長の恒川謙司氏より祝辞が披露された。引き続き、この会の設立に功績のあった劉世傑氏(故・前中国側代表)、および故・舘正知氏に対しで圭常氏(現韓国側代表)より哀悼の辞が述べられ、黙祷がしめやかに行われた。

基調講演とシンポジウム

 基調講演は、各国1名ずつ、振動病をテーマに講演された。3カ国における振動障害の現状、産業保健上の取り組み、および研究などの相違を把握することが可能であった。最終日の22日午前のシンポジウムにおいては、日本と韓国が中小企業への対応についての講演が行われた。なお、中国からは経済発展とこれに対応した産業保健活動施策についての発表が誌上で行われた。

                                  

ワークショップ

2001年より本会に先立って開催されており、本年で3回目となった。日本の代表として森本泰夫(筆者)、Lim Young先生(韓国代表)、Honggang Liu先生(中国代表)が会の運営に携わった。ワークショップのテーマは、職業性呼吸器疾患であり、従来からのじん肺等の疾患にこだわらず、アレルギー疾患、作業環境、検診、睡眠障害、様々な疫学研究や動物実験など、呼吸器に係わるすべてのフィールドを視野に入れ演題を募集し、今年も、バラエティに富むものとなった。睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング、台湾における中皮腫の疫学的研究、職業性喘息の概要と研究、CT健診による肺がんや肺気腫の早期発見、PM2.5曝露による試験管内試験、動物試験など報告された。トピックとして、Lim Young先生が、ナノ粒子への生態影響について講演され、次世代の曝露物質に対する動物実験や今後の動向が報告された。最後に、今後の職業性呼吸器疾患研究の展望について話題提供し、積極的な共同研究を行うことでワークショップを締めくくった。

フリーコミュニケーション

従来の一般口演やポスターセッションにおいても自由な議論を期待し、セッション名を上記のようにした。

(1)一般口演

6セッション、31(中国10、韓国10、日本11)演題が集まり、3会場に分かれ発表が行われた。トピックスでは、生物学的モニタリングの指標としての分子生物学的な手法やSARSによる医療従事者の感染リスクなどの発表があった。1演題の持ち時間を20分として、一般演題としては、破格な持ち時間であり、議論の充実化をめざしている。各会場において、闊達な議論が展開され、さらに議論が白熱し、時間が不足するセッションもあったが、大会関係者の意図が充分に伝わったと実感している。
        

2)ポスター

10セッションで演題が83(中国39、韓国16、日本28)となり、以前の演題数より着実に増加している。中でも中国の演題数が一番多かったことは、本集談会を通じて、国情を越えてポスター発表の意義に対する認識が浸透したものと確信している。発表内容において、化学物質による健康影響や疫学研究、人間工学や精神保健、環境対策など多岐にわたり、また、内容的にも充実している。昼食後、設けられた約1時間半のdiscussion timeにおいては、各所でポスターを前にした活発な意見交換が行われた。ポスター発表は、口演と比較すると言葉の問題や時間的制約が軽減されており、まさに交流の場にふさわしいセッションであると思われる。また、今回研究発表とは別に、国際労働衛生会議(ICOH)の活動、各種学会、さらに産業医科大学産業生態科学研究所の研究室を紹介したポスターが掲示されていた。今後、このセッションへの多施設の参加も期待する。

今年も3カ国の審査員による3つの視点から優秀ポスターの選考が行われた。

The best scientific poster    寺田和史先生和歌山県立医科大学

The best poster presentation  Dr. Shou-Yong ZhengKOSHA,Korea)

The most innovative poster     Dr. Sheng Wang(Beijing Univ. China)

       
  
     ポスター賞表彰式 (左より)李世薫氏(韓国事務局長)、 寺田和史氏、 王生氏(中国側代表)


Conference Information session(学会情報)

今年初めてもうけられたセッションで、アジアで開催される国際学会のアナウンスが行われた。北京大学医学部のWang Sheng教授から来年6月の中韓日の開催都市大連の紹介、産業医大高橋謙教授よりICOH, 織田進教授より第6回医療従事者のための産業保健国際会議(本年10月)、獨協医大の武藤孝司教授より第13回ICOH“産業保健サービス・調査・評価に関する科学分科会“開催(来年12月)、名古屋市立大学の井谷徹教授からはICOH中小企業の労働衛生学会(本年11月)の紹介が行われ、東アジアからの参加を呼びかけた。

バンケット

懇親会は、会場の小倉リーガローヤルホテルに於いて会食と祇園太鼓を堪能した。その後の恒例の各国対抗カラオケパーティにも50名ほどの参加があり、いつもながらにエキサイティングであった。お互いの理解を深めるのには、まさに絶好の機会であり、大会の趣旨から言うと、かなりの貢献度を示すセッション(?)といっても過言ではないと思う。ご協力頂いたホテルなど、格別の配慮をしていただき、この機会に謝意を表したい。

   
             
                カラオケ交流会

カンファレンス ツアー

 3日目の午後のカンファレンスツアーでは、大久保学会長が案内役となり、北九州市若松区にあるエコタウンを訪問した。このエコタウンでは環境、リサイクル産業の振興を柱に、それらの研究、人材育成、ビジネス展開などを行なっており、現在世界各国から、多数の専門家が見学に訪れている。参加者は、市民や視察者の環境学習の拠点を目的として建てられたエコタウンセンターでエコタウン概略の説明を受け、総合環境コンビナートに位置する自動車、家電リサイクル工場、建築廃棄物処理工場、医療用具リサイクル工場などを見学した。また、リサイクル産業のビジネス化について質問が集中した。その後、北九州市八幡にある北九州市のシンボル、皿倉山を訪れ、ケーブルカーとリフトを利用して山頂に登頂。北九州市を一望する雄大なパノラマを充分に堪能した。

   
                
           バスの中のツアー参加者                    皿倉山頂上にて

今後の展望

2001年の中国が正式に参加した当初は、北京からの参加者が中心であったが、今回は、上海や内陸部からの参加者もかなり増加しており、中国の産業医学の2代拠点が揃い踏みした。このような世界人口6分の1をしめる中国の積極的な参加により、3カ国の学術的交流が活性化され、東アジアにおける産業医学交流の拠点となることが期待される。さらに、ACOHとの共同開催を視野に入れて、2008年以降はACOH開催年は本会を独立に開催せず、アジア全体の産業医学の進展への貢献を視野にいれた活動を企図することとなった。
 

               
        王 生 中国代表 大久保 学会長 東 事務局長