第17回韓日中産業保健学術集談会 〜新たな協力と発展に向けて〜

   
                       
日本事務局長 東 敏昭
                         


 1984年、日本と韓国の産業保健関係者が立ち上げた本会に、2000年に中国が加わって
5回目となる第17回集談会は
2006年5月25日(木)〜27日(土)韓国済州島の
オリエンタルホテル
に於いて開催された。
 今回は
中国84人、日本53人、韓国124人、同伴者10余名を含む260名が参加し、
会の運営には大韓産業保健協会の職員の他、支援機関・企業を含め10名を超えるスタッフが
携わった。韓国産業安全衛生機関(KOSHA:Korean Occupational Safety and Health Agency)
からの参加者も20名に上り、韓国からの参加者は最多となった。


5月26日(金)開会式挨拶

主催国代表 Byung Soo Choi(大韓産業保健協会<KIHA>会長)
日本代表  大久保利晃(放射線影響研究所 理事)
中国代表  Wang Sheng(北京大学 教授)

主催国からは、Seong-Joong Kim氏(労働省副大臣:vice-minister)の歓迎挨拶では「産業構造、
相互の経済交流の強い東アジアの3国で、産業保健の課題も共通項は多く、また相互に協力して
解決する必要性が増加している」として、本会のもつ意義は大きく、より一層の発展への期待が
述べられた

基調講演

高橋謙(産業医科大学教授)
「The Global Asbestos Epidemic: Implications for the East Asian Region」
 〜現在のアジアの石綿問題と対応の提言〜

Jin-yuan Zhao (中国・北京大学教授)
「Progress in Study on Chemical Acute Lung Injury」
 〜中国における現在の課題と治療の現状〜

Kwang-ho Meng(韓国・カソリック大学教授)
「Professionalism in Occupational Health」
 〜技術習得と倫理教育など専門家としての人材育成に関わる課題と今後の展望〜

筆者の私見であるが、最近では最もキーノートスピーチがうまく学会の進行を牽引したと考える
 
   
5月25日(木)ワークショップ(WS)
ひとつのテーマについて3回の集談会にわたって取り上げ、成果をまとめることを目指した
この回は今回で2回目を迎えた。
現テーマは「
筋骨格系障害(MSDs:Musculoskelethal Disorders)
診断、治療、予防の様々な側面からの発表が行われ、活発な議論が行われた。

日本
中村英一郎(産業医大)
城憲秀(中部大学)
筒井隆夫(産業医大)

韓国
Chang-Woo Hong (KOSHA)
Inah Kim(Hanyang大学)
Jaewook Choi(Korea大学)

中国
Yu-bin Zhang(Fudan大学)
Xin Feng(北京大学)

ワークショップ運営上の総合世話人
Wang Sheng(北京大学教授)
Choi Jae-wook(Korea国立大学教授)
森本泰夫 (産業医科大学教授)

         

5月26日(金)自由演題発表


口演発表17題の概要

「有害化学物質(Chemical Hazards)」4題
「肥満:メタボリック症候群(Obesity: Metabolic Syndrome)」4題
「産業衛生教育:じん肺(Occupational Health Education; Pneumoconiosis)」5題
「ストレス(Stress)」4題


新旧取り混ぜての産業現場の課題が取り上げられている。働く人の健康を守るため、各国の学術的
研究レベルを相互に高めるための行動研究、情報交換の必要性を実感した。

ポスター発表の概要
「産業保健サービス(Occupational Health Service)」17題
「曝露評価(Exposure Assessment)」16題
「職業性疾患:事故(Occupational Diseases: Accident)」9題
「人間工学:筋骨格系障害(Ergonomics;MSD)」9題
「有害化学物質(Chemical Hazards)」16題
「粉じん:じん肺(Dusts; pneumoconiosis) 」6題
「生理的要因(Physical Agents)」9題
「ストレス;外国人労働者(Stress; Immigrant workers)」10題
「最近の課題(Recent Topics; Miscellaneous)」12題

演題数は目に見えて増えている。中国では、ポスター発表の位置づけが十分に意義づけられていない
ためか、104に上る登録のうち20の発表がキャンセルされたことは残念であった。語学力の壁が
あっても発表しやすく、また会場で時間のゆとりをもって議論できるポスターによる発表の意義と
その浸透率をより高めていく必要があると考える。

       

ポスターへの発表を促進するためにも、本学会では、3人のポスターアワード(革新性、科学的論理
性、表現)を選出、授与している。
本年の優秀ポスター賞受賞者
Most integritive賞 太田雅則(産業医科大学)
Most innovative賞 Yong-hui Wu (中国・ハルピン医科大学)
Best presentation賞 Yong-Dae Kim (韓国・ Chungbuk 国立大学)

              
中国側受賞者のYong-hui Wu氏

恒例になった優秀ポスター賞(3賞)の授賞式は、参加者250名に上る懇親会のメーンイベントの
ひとつである

        
5月27日(土)シンポジウム 
テーマ「企業における健康増進(Health Promotion in the Enterprises)」

シンポジスト

日本

武藤孝司(独協大学)
澤田 亨(東京ガス健康開発センター)
韓国
Kang Sook Lee (カソリック大学)、、
Eun-Hee Chang (KOSHA)、、
Soo-Young Kim(Eulij大学)
中国
Shan-fa Yu(Henan産業医学研究所)

時間差はあれ少子高齢化が進む各国にとって、現在および将来の重要な課題であり、相互の知識と
知恵の交換は文化的背景が近い3国において、より意義があるものと思われる。

      
  
      運営委員会             (懇親会にて)運営委員

5月26日夕刻には、懇親会が開催された。本会では発足時に会員の強い理念もあり、各国参加者
相互の交流も重要な目的とされている。第二世代に移ってもこれは大事にしていきたいと考えている。
懇親会には250名が参加し、韓国の民族音楽、舞踏が披露され、各国よりそれぞれの国の歌を歌う
という企画も行われた。懇親会に引き続き恒例のカラオケセッションも開催されたが、参加者のパワー
を感じるとともに、こうした機会で親しさを増すことができる、同じ文化的背景のもつ利点も実感する。

          
 
        設立者として集談会の発展に寄与された            韓国代表のChoi Byun-Soo氏は
         Cho Kyu-Sang顧問(左) と 乾修然顧問            音楽家としてプロ級の腕を披露


26日に開催された3カ国代表による運営委員会では、口演発表数の枠を増やすための方策(口演時間
の短縮、概要は口頭・詳細はポスターの併発表方式)、学会の公式HPの充実、共同研究の促進、
学会時の教育口演で主催国の文化を学ぶ講演を加える、などの提案が行われ、具体案を各国事務局長
会議に委ねることが決定された。

次年度の集談会は、2007年5月20日(日)〜22日(火)名古屋市立大学の井谷徹教授
が学会長、中部大学生命健康学部の城憲秀教授が事務局長として、名古屋国際会議場で開催さ
れる

後半はウィークデーでもあり工場訪問が企画されている。
なお、2008年の開催地は中国蘇州の予定となっている。

各国の参加者の協力、運営委員の前向きな姿勢もあり、本会は順調に発展を遂げている。学術的な
レベルや発表の質、共同研究の推進、より若い世代への重点の移行などの課題は残っている。
また、各国の関心の温度差もあり、各国とも参加費、旅費すべてをそれぞれで負担する仕組みの中、
中国からの参加者と演題は順調に増加している。

日本からの参加者は相対的に少なく、参加者の範囲の広がりに乏しい。アジア労働衛生会議
(ACOH)にも見られる傾向であるが、企業活動などの交流も多く、文化の近い国々での緊密な
相互交流と知識の交換は実務家にとっても意義は大きいと考える。