第14回韓日中産業保健学術集談会の報告

         〜3国鼎立の国際学会に〜


                    日本側事務局長 東 敏昭


 去る200216日〜18日、韓国南部の港湾商業都市、釜山市内のリゾート海雲台のパラダイスホテルにおいて第14回「韓日中産業保健学術集談会」が開催された。
日韓中の3国になってからは第2回目となる。本会は
韓国の李昇漢代表李世薫事務局長のもと、大韓産業保健協会(Im goung Yun会長Kyu Sang Cho名誉会長)の全面的支援によって運営された。

釜山は日本から一番近い外国の都市で博多から高速船で2時間50分という気軽さがあり、相互の行き来も多い。海雲台は美しい砂浜をもち、ここからの眺めは日本でも有名な「釜山港へ帰れ」の歌詞にも歌われている。ホテルが立ち並ぶ街は5月31日から始まるワールドカップを待つ気運の中にあった。

*会の概要

本会は16日(木)の午後のワークショップ「職業性呼吸器」と、17日朝の開会式から18日正午の閉会式までの本会、併せて2日間の会期をもっている。各国の現在の課題を紹介する形となるキーノートスピーチ(プレゼンテーション)、共通の課題について各国の研究状況を紹介し、議論するシンポジウム、口演、ポスターによる一般発表からなる。会議後発表された本会への登録参加者数は、開催国の韓国が98名、日本72名、中国63名の計233名とのことであった。

開会式では、文化的背景と現在の産業構造面での共通性の高い3国による本会の学会として並びに親交の場としての意義を踏まえた、各国代表のスピーチが行われた。韓国代表の李昇漢氏(カソリック大学名誉教授)、日本代表の大久保利晃(産業医科大学学長)、中国代表の劉世傑(北京医科大学名誉教授)の代行として王生氏(北京大学教授)の挨拶に続き、韓国労働安全衛生局長からの歓迎のスピーチが行われた。

            
           開会式で挨拶する大久保利晃代表          会場風景

 開会式の後には会場となったパラダイスホテルの前で集合写真を撮ることとなり、参加者の中には間に合わなかった人もいたが、全員が入りきれないほどの盛況であった。また、幼い子供を連れた日本の女性医師も参加しており、これからの本会運営では北欧での学会のように配慮すべき課題の一つであろう。

 本会は、大韓産業保健協会のスタッフをはじめ、韓国参加者、各国事務局の貢献により円滑に運営された。16日夕刻の歓迎カクテルパーティー、17日の晩餐会、昼食、コーヒーブレーク、カラオケパーティーなど相互の親睦を図る会も、時間、進行とも欧米や南アジアと異なる、東アジアの習慣として馴染みやすいものであった。

            

*ワークショップ、キーノート、シンポジウム 

5月16日(木)の午後に行われたワークショップは、今年も3国共通の課題である「職業性呼吸器疾患」を取り上げた。日本の世話人は森本泰夫氏(産業医大教授)で、今回は国際労働衛生会議(ICOH)の「職業性呼吸器疾患」科学分科会の代表、高橋謙氏(産業医大教授)からの協力参加の申し出があり、共催の形で行われ、100名以上の参加者があった。

キーノートスピーチでは、韓国労働安全衛生局(KOSHA)のHo Keun Chung所長韓国における産業保健の課題と改善活動の概要を、日本からは川上憲人氏(岡山大学教授)が職域におけるメンタルヘルスおよび自殺予防対策を、中国からは、Guandong職業性疾患防治センターJianxun HuengDCE中毒性脳症についての報告が行われた。各国の状況が反映された興味深い発表であった。

キーノートスピーチ

Ho Keun Chung:「韓国における産業保健改善戦略」

川上憲人:「日本の職域メンタルヘルスおよび自殺予防国家戦略」

Jianxun Hueng:「1,2ジクロロエタン曝露による中毒性脳症」


シンポジウムでは、日本で現在、韓国では近々未来、中国では近未来の課題である少子高齢化を背景とした「労働人口の高齢化」がトピックに取り上げられた。日本からは、井谷徹氏(名古屋市立大学教授)、池田正春氏(産業医科大学教授)、韓国からは、Byung-Mann Cho(釜山国立大学教授)、Yang-ok KimChosun大学教授)、中国からはZimiming WangSichuan大学公衆衛生大学院教授)が、それぞれの研究成果を発表し、多くの関心を集めた。
               

シンポジウム「労働人口の高齢化」

井谷徹:「いかに高年齢労働者の作業負担を減らすか」

Zimiming Wang
:「中国の労働者加齢と就業能力」


Byung-Mann Cho:「加齢と慢性疾患のリスクファクター」     

池田正春:「健康増進による職業適応に必要な身体機能の低下防止」

Yang-ok Kim:「地方におけるレジャー活動と高齢者の生活満足度」

Jian Li:「小中学校教員の職業性ストレスと負担感」


 また、国際労働衛生会議(
ICOH)の「失業と健康」科学分科会からの参加希望があり、代表である
Thomas Kieselbach(ドイツ:ブレーメン大学教授)がシンポジウムの場で「労働変動の時代の産業保健と人材マネージメントの役割」としてICOH「失業と健康」分科会などの欧州における研究プロジェクトとその焦点についての照会を行った。
 本会に対するICOH科学分科会を始め、関係国際学術関係団体からの参加ならびに共催申し出が上記の分科会以外からもあったが、本会に対する関心が高まっていることが伺われる。
  

      
                            ポスターセッション
    

                                

*一般口演、ポスター

一般口演、ポスターは企画した内容ではなく、広く産業医学・保健に関わる調査研究の成果について発表頂くものである。一般発表申し込み演題数は計117演題で、このうちポスターによる発表予定が68題であった。職業性呼吸器疾患、化学物質による中毒の発表が多いが、人間工学、産業保健活動評価、環境対策、感染症対策など報告課題は多岐にわたっている。

口演発表への申し込みが多いが、割当てられる時間は限られており、また、英語という言葉の問題もある。こうした問題を解決するための手段として、ポスター発表の重要性が高まっている。特に、自分の関心の高い演題について発表者と時間にとらわれず意見交換ができる場であり、共通の課題を研究する者同士が将来の共同研究や交流を行う契機ともなる。ポスターセッションにおいても口頭発表時間を設け、その充実が図られた。

 こうしたポスターセッションの充実を図ることを目的とし、今年から優秀なポスターを表彰することとなり、評価・選考委員会を設けてこれにあたった。表彰にあたってのポスターの評価は「科学性、論理性」、「発表技術」、「革新性あるいは実務有用性」の3つの側面からなされ、それぞれ晩餐会の席上で開催国の李代表により、以下の三氏に表彰と賞品の授与が行われた。


The best scientific poster presentation賞」
Ding Li(中国河北省から産業医大に留学中): Gene Expression of CCSP, SP-A and TTF-1 in the lungs of rats exposed to potassium Octatitanate Whiskers In vivo

The best poster presentation賞」大和浩氏(産業医科大学)
 : Effective methodology to introduce designated smoking area in workplaces

The most innovative poster presentation賞」
Yangho Kim(韓国蔚山医科大学)
 : Evaluation of estrogenecity of major heavy metals


 この表彰制度は今後も続けられ、ポスター発表の充実を図ることとなっている。

                       
       

学術集談会の今後

中国を加え3国となった韓日中産業保健学術集談会への関心は広がりを見せ、また、演題、参加者の数は、本分野の国際学会としても比較的大規模なものとなりつつある(産業医学ジャーナル 第24No.5参照)。特に今回は中国から63名の参加者があり、また参加にあたっての費用は全て参加者側が負担した。

 当初中国10都市区域から78名の参加予定者があったが、海外渡航手続きが間に合わず15名が不参加となり、来年、日本での開催に当たっては周到な準備が必要である。また、多くの発表の機会を確保するためポスターセッションの充実を図るが、ポスター発表に対する認識が国によって異なり、参加への意識啓蒙と発表技術の向上が望まれる。

本会には顧問である韓国の゙圭常、日本の館正知氏乾修然氏も参加され、3国代表による運営委員会では本会の今後のあり方運営についてコメントを受けた。規模の拡大と世代交代の進行により科学的知識の交換と並ぶ学術集談会の目的である相互の親睦・理解と活発な交流による協力関係の確立の機能が薄れることがないよう、ポスター、カラオケ、相互の紹介などの機会充実など、会の運営とともに具体策について3国の事務局が検討を行い「ひと味違う」国際会議を目指している。より一層の相互理解と交流が望まれる現在、今後も様々な形での参加を期待しています。

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