21回日中韓産業保健学術集談会 

                                            
 学会長 武藤 孝司 
                                             獨協医科大学 教授

                                           日本事務局長 東 敏昭
                                              産業医科大学 教授

                                                
1.はじめに

 第21回日中韓産業保健学術集談会 (21st Japan-Korea-China Joint Conference on Occupational Health)は平成22610日〜12日に
栃木県宇都宮市の栃木県総合文化センターにおいて、
”Extending Occupational Health Services to All Workers” をメインテーマとして
開催された。参加者は中国
28名、韓国51名、日本113名の合計185名で、招待者、同伴者、主催関係者を含め200名を超える会議
となった。本稿ではその概要ならびに3か国の運営委員で構成される運営会議での報告・決定事項、国際労働衛生学会(
ICOH
関係者会議の内容について報告する。

2.プログラム

(1)プログラム概要

 開会式では厚生労働省から平野良雄・安全衛生部長(代理:鈴木幸雄・労働衛生課長)と寺野彰・獨協医科大学学長から祝辞を
頂き、その後、この学術集談会の各国代表からそれぞれ、ご挨拶を頂いた。

(2)基調講演

 基調講演は各国から1人ずつお願いし、わが国からは井谷徹・元ILO労働衛生部長が世界の産業衛生の現状と今後の方向性について、
ILO勤務時代の経験をもとに講演された。中国からは中国労働関係研究所のDou Chang博士が、経済発展に伴って農村から都市への
出稼ぎ労働者が増加しており、その労働衛生対策が課題であるという報告をされた。韓国からは蔚山大学の
Yangho Kim 教授が溶接
工のマンガン中毒を早期発見するための方法としての機能的
MRIの有用性について講演された。

(3)シンポジウム

 シンポジウムは「産業保健担当者である産業医、産業看護職、衛生管理者等の役割」というテーマで開催された。
韓国では多くの病院に産業保健担当部門が置かれていて、そこに産業医が勤務していることが発表された。また、
50人以上の労働
者を雇用する事業場では産業医を選任しなければならないわが国の制度とは異なり、韓国では数年前から法制度が変わって、企業
が選任するのは産業医、産業看護職、作業環境測定士のどの職種でもよいという制度になったことが発表された。しかし、討論の
中で、この点に関しては今後の検討課題となっていることが出された。


 シンポジウム   ワークショップ

(4)ワークショップ

 ワークショップは3年連続のテーマである Workplace Health Promotion をテーマとして行われ、今回がこのシリーズの最後と
なった。わが国から4題、韓国から2題、中国から1題の発表があった。3回の発表演題を中心にして、
Workplace
Health Promotion
というテーマで国際誌に特集号を出すことが計画されている。

(5)特別講演

 特別講演は昨年のソウルでの学会から始まったもので、産業保健に直接の関係はないが、開催国の特徴が出ていて、かつ参加
者に役立つ内容のものということで、昨年は「キムチ」の話であった。今回は、温泉の効用に関して、
Magic and charm of hot
spring therapy: From traditional medicine to modern medical science
と題して、埼玉医科大学の倉林均・准教授にお話を頂いた。温泉
の効用に関して、科学的な知見を中心にお話いただいたことで、大変参考になったという感想が多く聞かれた。

(6)企業の産業保健活動

 今回初めての試みとして、1日目のワークショップの前に、栃木県内にある4事業場の産業保健活動を紹介するセッションを
設けた。普段、なかなか分からない他社の産業保健活動を知ることができて大変参考になったという感想が多かったので、今後
も引き続き、このセッションが継続されることを期待したい。

(7)一般演題

 一般演題は、口演発表が18題、ポスター発表が55題の合計73 題であった。口演発表は3会場に分かれて行われ、職業病関連6題、
リスク要因関連
6題、健康管理関連6題であった。ポスター発表はOral-Poster Presentationというこの学会特有の方法で行われた。
すなわち、ポスター発表者は、ポスター展示の前に
2分間で発表内容に関して目的と方法をパワーポイントを使って説明し、
その後で通常のポスター発表を行うという方法である。この方法を用いると、比較的短時間で多くのポスターの内容を把握できる
という長所がある。


  

(8)懇親会

 懇親会は宇都宮東武ホテルグランデで約150名が参加して行われた。食事のメニューは和食を中心に吟味した甲斐があって、
多くの参加者から非常に美味しかったという評価を頂いた。食事後のアトラクションでは津軽三味線の演奏と阿波踊りが披露された。
津軽三味線は小山会所属の
5名によって演奏され、聴衆はその迫力に圧倒された。阿波踊りは獨協医科大学越谷病院の教職員22
からなる獨医連が披露した。途中から踊りの指導が入って、懇親会参加者ほぼ全員が踊りに参加するという光景が出現
した。最後は、この学会恒例のカラオケでさらに会場が盛り上がり、この学会の目的の一つとする懇親の実があがったと思われる。

                   

2.運営会議

 3か国の運営委員で構成される運営会議が612日の昼食時に開催された。この会議で、22回の開催地は中国山東省
の済南市が提案された。開催日については、季節、各国の行事を調整し
2011626日(木)から28日(土)と決定した。2012
については、韓国南西部の都市での開催が計画されているとの報告があった。


                    

 また、日本の常設事務局は産業医科大学におくことになっているが、現在の東敏昭教授(運営委員、事務局長)の大学退任に伴い、
来年度から事務局長を森本泰夫教授(運営委員)に交替する予定が日本代表より提案された。中国からは行政の仕組みの変化に対応
して、運営組織の見直すこと、韓国は当面このままで継続することが報告された。

 今後のワークショップおよびシンポジウムのトピック、これまでの成果の国際ジャーナルへの掲載について意見交換と提案が行わ
れた。なお、
2014年のアジア労働衛生会議(学会:ACOH)の日本招致への協力、日本開催となった場合のACOH2015年ソウル開催
の国際労働衛生学会(
ICOH)での本会の協力のあり方について、今後意見交換を行うこととなった。
 

3.国際労働衛生学会(ICOH)関係者会議

 日中韓の運営委員、会員がICOHの理事長を含む、理事、各国事務局を勤めていることから、本会の開催を機会にICOH関係者ディナー
会議が
611日、歓迎カクテルパーティー、事務局会議の後に開催された。日本の川上憲人理事、堀江正知事務局の呼びかけによる
もので、小木和孝会長、王生理事(中国北京大学)、李世薫韓国事務局(カソリック大学)、井谷徹(前
ILO労働者保護局長)、吉川徹
ICOHWG)、森本泰夫・東敏昭(KJC事務局)が参集した。各国のICOH関連活動の状況報告の後、今後、リスクアセスメントおよび
参加型産業保健アプローチについてのガイドライン・要領の作成について、積極的に参加、推進することが会長より提案され、合意された。

4.おわりに

 今回の学会プログラムの作成に当たっては、韓国事務局の李世薫・カソリック大学教授と日本事務局の東敏昭・産業医科大学教授
から多大のご支援を頂いた。また、昨今の厳しい経済環境にも拘わらず、多くの団体・企業から財政的支援を頂いた。
吉村美穂・日本側事務局員と西連地利己・現地事務局長は
1年間にわたって学会準備のあらゆる面において精力的に取り組んで頂き、
斧澤京子・現地事務局員は短期間での抄録集作成に貢献して頂いた。この場をお借りして、深甚なる謝意を表する。
              

現場で活躍される産業医、産業看護、労働衛生の専門家各位の本会への参加と、上記のワークショップ、シンポジウムのテーマに
ついてのご意見を募集します。学会のホームページは
http://wshiivx.med.uoeh-u.ac.jp/kjc/index.html
メールでの連絡先は、
E-mail: kjcjc@mbox.med.uoeh-u.ac.jpです。